『短編小説』泳げない私の夏 その2
イラスト アナログ コピック最高ランク : 20 , 更新: 2017/08/20 10:04:48
ザブンッと勢いよく飛び込んだ彼。
深さは軽く3、4メートルはある。
もちろん、足はつかない。
飛び込んだまま、全然上がってこない彼に対して一抹の不安を抱く。
助けを呼んだ方がいいのかもしれない!
そう思い、浜辺の方に向かって声をあげようとした時だ。
「あーっ!やっぱ最高だな!!夏の海は!」
そう言いながらザバッと勢いよく水を掻き分け、私の浮き輪をガシッとつかむ。
「なぁ、お姉さんもそう思うだろ?」
悪戯っぽく笑く彼の顔を見て、私は息を呑む。
「おい、どうした?お姉さん??」
水に濡れた彼の髪は不思議な色に輝いていた。しかし、それよりももっと不思議なのが彼の耳から出ていたのだ。まるで、魚のヒレのような…彼の耳。
そして、彼の体に生えているのは私のような人間の足ではなく、大きな美しいヒレついた魚のような尾びれだった。
「に、にに…人ぎ…」
ビックリして声を上げそうになる私の口を彼は手で塞いだ。悪戯っぽい瞳が私を見つめる。吸い込まれそうな深い海の底のような瞳。
「あー、はいはい。大きな声出さないの。他の人に見つかるでしょ?…ねぇ、お姉さん。僕と友達にならない?泳ぎを教えてあげる代わりに…ね?」
その輝く笑顔でお願いされたら、つい頷いてしまうのが人の恒というものなのだろうか。私が頷くや否や彼は嬉しそうに言った。
「やった!そうと決まれば…!!」
彼がザブっと再び海に潜った瞬間、思いっきり彼に足を引っ張られる。もちろん、力に叶わず私はスポンッ!と浮き輪を離して海に引きずり込まれる。
そして、彼は抵抗する私を引っ張りながらどんどん沖の方へ、海の底へ泳いでいく。
「(駄目っ!!息ができない!!)」
すると、彼はそれを察してか口を開く。
「大丈夫、安心して!僕と一緒にいる間は息がちゃんと出来るから!ほら、息を吸ってご覧!!」
彼の言われた通りに息を吸う。空気を吸うのとは少し違い、ちょっとしょっぱく感じる。
まゆを潜めながら息を吸ったり吐いたりしている私を見て彼は鈴の音のような声を上げて笑ったのだった。
僕は彼女の手を引きながらワクワクを抑えることが出来なかった。
久しぶりに海底にヒトを呼ぶからだ。
ちょっとした気晴らしに、いい遊び道具にでもなればいいかなって思ってる。
人魚の国の国王の長男として生まれた僕は、宮殿の中で退屈に暮らしていた。沢山の姉たちは僕に世話を焼くし、面倒くさくて今日も逃げ出してきたところだった。そこに丁度いい遊び道具があったんだ。手に入れるのは当たり前だった。
どんどん深く潜っていく中、僕は知る由もなかった。
僕がこの尾びれを捨てて、地上に行きたいと思うだなんて…
彼女のことが愛しいと思うようになるなんて…
けど、これはまだ少し先の話。
おわり
ちなみに、イラストはインク切れで途中です。(;´д`)トホホ
ほんとに中途半端な所でインクが切れたので浮き輪と腕の間が塗れてなくて、変な感じになってますが目をつぶってください!!!
もなか@中身はこしあん
2017/08/20 10:06:18 違反報告 リンク
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