白兎【企画参加】

一行小説
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最高ランク : 8 , 更新: 2017/12/25 8:33:40

アァ、酷いではありませんか! アナタはもうワタクシに愛想が尽きたとでも云うのですか? ワタクシはまだまだアナタと遊んでいたいのに。アナタは何時もそうだ。此方側から何か云っても、ソレに気付いていないような、聞こえていないような素振りをする。

昔が懐かしいです。アナタが、アンナに単純で、純粋で、疑うコトをしなかったアノ頃が。そんなコトを云っていると、嫌でもアノ頃を思い出しますねェ。アナタは、たしかーー。

「さあ! お茶会しましょ!」

明るい顔でソウ宣言し、お茶会を始めたのでした。マダ白くてすべすべの肌で、ティーカップにお茶を入れるーーフリをしたのでしたね。おままごと。体が生まれつき弱かったアナタは、庭より外に出るコトを許されなかった。アナタは、ソウ、仕方なく庭で出来る遊びを懸命に考えていたのです。庭の大きなテェブルに、ティーカップやポットや作り物のケェキを乗せて、お茶会の開始を宣言する。

アナタは、ソノ遊びを心から楽しんでいるように見えました。たとえ、ホンモノのお菓子やお茶ではなくとも、自分でお茶会を始めるソノ仕草を楽しんでいるようでした。

オマケに、アナタの母親の趣味もあり、アナタはエプロンドレスを好んで着ていましたよね。まるでーーソウ、「不思議の国のアリス」のお茶会を模しているようで、ワタクシも楽しかったのですよ。

他にも、ソウですね……。一緒に寝たコトも少なくありませんでした。風の強い夜、轟々と叩きつけるような風の音が怖いと云い、アナタはワタクシと一緒に寝るコトにしたのですね。風の夜のみならず、雷、大雨、地震。ありとあらゆる自然現象を怖がり、幼いアナタは一人で寝れなくなってしまった。ぶるぶると震えるアナタに、ワタクシは特別何かをしてあげるコトは出来ませんでした。ケド、アナタがスヤスヤと寝息をたてて眠りについたときは、ワタクシも安心したのですよ。

「ねぇヘンリー。わたしとずっと一緒にいてね? 約束だよ?」

幼いアナタは、何時もワタクシにソウ云っていました。ワタクシは、ソノ約束を今でも忘れてはいません。ですが、アナタは忘れてしまったのでしょうか。まるで、恋人同士の甘い言葉のような約束を、十年経っただけで忘れてしまったというのでしょうか?

ソレは、あまりにも酷い仕打ちではありませんか。

アナタは今日もワタクシを無視する。ソレは、無視するコトが義務であるかのように。アナタはずっと本を読んでおられる。本を読むコトは、教育上素晴らしいコトではありますが、無視するコトも悪いコトだと自覚してはくれませんか。

気付いてください。アナタを、幼い頃からずっと見守ってきて、アナタのコトを一番思っているワタクシが、此処にいるのです。

「ずっと、隣にいるのですよ、アリス。そろそろ気付いてくれませんか」

思わず声に出してしまった。アナタは、ビクッと肩を震わせ、本を読むのを止めた。アァ、ゲームオーバー。ナントカ声を出さずに気付いてもらいたかったのに。マァ、今となっては仕方ない。

「誰!? 誰なの?」
「ククク………」

笑いが漏れてしまった。ワタクシが、此処まで無視をされてもアナタの側にいた理由。アナタの反応だ。一番最初は、お茶会のとき。ワタクシが「アナタはどのお菓子が好きなのですか?」と尋ねると、アナタは今日と同じように肩を震わせ、まじまじとワタクシを見てくださった。二回目は五年程前。アナタが人形を買って貰ったときだ。「ワタクシは用済みですか」と聞くと、これまた同じように肩を震わせて恐怖の目を此方に向けた。今日は三回目だ。ーーコレだから、アナタの隣にいるのはやめられなかった。話しかけるたびに反応してくれる。その快感がワタクシを喜ばせた。

「ワタクシですよ。ヘンリーです。クク、アリス。また仲良くしてくださいね……?」

アナタはワタクシをやっと昔のように抱きかかえてくれた。アァ、アナタのお顔がヨォク見える。ソノ、ビー玉のような澄んだ瞳も、ふわふわのくせ毛も、キュッと小さな唇も。澄んだ瞳には、片眼鏡をした碧い瞳の白い兎の人形が映っている。アァ! アナタの瞳にワタクシの姿が映っている! コノときを何度夢見たか。

「あなた……なの? ヘンリー」

ワタクシのコトを見てくれたのですね。光栄です。コノ快感のために、ワタクシはアナタの隣にいるのです。アナタの隣にいることはもはやワタクシの使命なのであります。アナタの隣にいることはやめられない。これからも宜しく頼みますよ、アリス。

♤♡♧♢
梨月ちゃんの企画(URL→http://ulog.u.nosv.org/item/nikoakohorimiya/1513944680)に参加させていただきました!
皆さん素敵な小説を書かれているようなので、私は一応得意分野の怪奇小説染みたものを書かせていただきました。
企画の内容とはだいぶズレているような気もしますけど……。

魂を持つ人形の話。
これがのちに、前書いた「骨董品」(URL→http://ulog.u.nosv.org/item/yuzuhamburg231/1508684057)の紳士になるのです( ˘ω˘ )
「骨董品」の紳士は、アナタ=アリスの死後、使命の無くなった白い兎の人形=ヘンリーなのです。

即興で書いたのでかなりガバガバです。誤字等あったら教えてくれると幸いです。

À la prochaine!

妃有栖


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あ……(きっと何か意味が有るんだろうなぁなんてワクワクしながら考えていたら突然作者が出てきて自分の趣向ですと期待を真っ二つに割られた時のあの何とも言えぬ気持ち)
と、まあ上のは冗談で、あれやこれやと読者が楽しく考えられるぐらい素晴らしいものだよってことね。こうして二次創作は生まれるんだなぁ。


二代目北斎
2017/12/25 9:11:08 違反報告 リンク